意匠権とは|保護対象・登録要件・侵害時のリスクと実務対応

~物品・建築物・画像のデザインを保護する意匠法の全体像と,侵害時の差止め・損害賠償・刑事罰まで~

意匠権は,物品,建築物又は画像の形状等であって視覚を通じて美感を起こさせるものを保護する知的財産権です(意匠法第2条第1項)。特許庁への出願・審査を経て登録されることで発生し,出願をしていない場合は原則として意匠権に基づく差止めや損害賠償を請求できません。もっとも,未登録の商品形態についても,事案によっては不正競争防止法による保護が問題となり得ます。意匠権侵害が成立すると,侵害者は差止請求(意匠法第37条),損害賠償請求(民法第709条,意匠法第39条)に加え,故意による侵害の場合は刑事罰(意匠法第69条)のリスクを負います。

【この記事の結論】
  •  意匠権は,物品・建築物・画像の形状等であって視覚を通じて美感を起こさせるものを保護する権利であり,特許庁への出願・登録により発生します(意匠法第2条第1項)。
  •  登録には,工業上利用可能性,新規性,創作非容易性,先願の意匠の一部との非同一・非類似,不登録事由に該当しないことなど,複数の要件を満たす必要があります(意匠法第3条,第3条の2,第5条等)。
  •  意匠権に基づく請求には原則として意匠登録が必要ですが,未登録の商品形態についても,事案によっては不正競争防止法上の保護が問題となり得ます。
  •  意匠権侵害が成立した場合,侵害者は差止請求,損害賠償請求に加え,故意による侵害には刑事罰(10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金又はその併科。意匠法第69条)のリスクを負います。法人の業務に関する侵害には,両罰規定により3億円以下の罰金が科され得ます(意匠法第74条)。
  •  関連意匠制度は,2020年(令和2年)4月1日施行の改正により,出願可能期間が本意匠の出願日から10年を経過する日前までに延長されています(意匠法第10条第1項)。

この記事はこんな方におすすめです

主要用語の定義

意匠とは,物品(物品の部分を含みます。)の形状,模様若しくは色彩若しくはこれらの結合,建築物(建築物の部分を含みます。)の形状等,又は機器の操作に用いられる若しくは機器の機能発揮の結果として表示される画像(画像の部分を含みます。)であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます(意匠法第2条第1項)。

意匠権とは,意匠登録によって発生し,登録意匠及びこれに類似する意匠を業として実施する権利を専有する権利をいいます(意匠法第23条)。

関連意匠とは,自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(本意匠)に類似する意匠として,別途意匠登録を受けたものをいいます(意匠法第10条)。

1.意匠権とは

📌 この章の結論

意匠権は,特許権・商標権と並ぶ知的財産権の一つであり,物品,建築物又は画像のデザインを保護する権利です。特許庁への出願・審査を経て登録されることで発生し,出願をしなければ権利は生じません。

1-1.意匠権が用いられる場面

自社製品と類似する製品を競合他社が販売している場合に,これを防ぐための手段として,特許権や商標権とともに意匠権が用いられます。意匠権は,意匠法に基づき特許庁に出願し,審査を経て登録されることで取得できる権利です。

意匠権によって保護される対象は多様であり,携帯電話等の工業製品,建築物の外観,スマートフォンのアプリケーションの画面デザインなどが含まれます。特に画像(GUI)や建築物,内装については,2019年(令和元年)意匠法改正(2020年(令和2年)4月1日施行)により保護対象として明確化されており,デジタルプロダクトや店舗デザインを展開する企業にとっても関係が深い制度です。

1-2.出願をしなければ権利は生じない点

意匠権は,出願をしない限り認められない権利です。自社で時間と労力をかけて開発したデザインであっても,意匠登録出願をしていない場合,意匠権に基づく差止請求や損害賠償請求はできません。もっとも,未登録の商品の形態についても,事案によっては不正競争防止法上の形態模倣商品の提供行為の規制(同法第2条第1項第3号)が問題となり得ます。同制度は意匠登録を要しない点で意匠権とは異なりますが,保護対象,成立要件及び保護期間(商品の最初の販売から原則3年間)が意匠権とは異なるため,意匠権による保護とは別制度として理解する必要があります。

2.意匠の定義-意匠法第2条第1項

📌 この章の結論

意匠法上の意匠とは,物品若しくは建築物の形状等,又は法定された画像であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます。ここでいう美感は,美術品のような高尚な美しさを求めるものではありません。

意匠法第2条第1項は,意匠を,①物品(物品の部分を含みます。)の形状,模様若しくは色彩若しくはこれらの結合,②建築物(建築物の部分を含みます。)の形状等,③機器の操作の用に供される画像又は機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(画像の部分を含みます。),であって,④視覚を通じて美感を起こさせるものと定義しています。

「美感を起こさせるもの」という要件は,美術品のような高尚な美を要求するものではなく,視覚を通じて何らかの装飾的・感覚的な印象を与えることをいうと解されています。専ら物品等の技術的機能のみを果たす形状は,美感をほとんど生じさせないものとして,意匠に該当しないと判断される場合があります。この点は,美的価値の高低を審査するものではなく,特許法・実用新案法が保護する技術的思想との境界を画する趣旨の要件と理解されています。

3.意匠登録を受けるための要件

📌 この章の結論

意匠登録を受けるためには,工業上利用可能性,新規性,創作非容易性,先願の意匠との関係,不登録事由に該当しないこと等,複数の要件をいずれも満たす必要があります。

3-1.工業上利用することができる意匠であること(意匠法第3条第1項柱書)

意匠登録出願に係る意匠が,物品,建築物又は画像に係るものとして把握できること,意匠それ自体の形状等であること,視覚に訴えるものであること,視覚を通じて美感を起こさせるものであることなど,意匠該当性等の要件を満たす必要があります。具体的な運用は特許庁の意匠審査基準に定められています。

3-2.新規性を有すること(意匠法第3条第1項各号)

意匠登録出願前に,日本国内又は外国において公然知られた意匠,又はこれらに類似する意匠は,登録を受けることができません。出願した本人が自ら創作した意匠であっても,出願前に公開されている場合は新規性が認められないのが原則です。もっとも,一定の要件の下で,意匠法第4条の新規性喪失の例外の適用を受けるための手続を行うことにより,新規性を失わなかったものとみなされる場合があります。適用要件及び具体的な手続は個別の事情によるため,公開を予定している場合は事前に確認することをお勧めします。

3-3.創作非容易性を有すること(意匠法第3条第2項)

その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠は,登録を受けることができません。

3-4.先に出願された意匠の一部と同一又は類似でないこと(意匠法第3条の2)

意匠登録出願に係る意匠が,その出願の日前の他の意匠登録出願であって,出願後に意匠公報に掲載されたものの一部と同一又は類似であるときは,原則として意匠登録を受けることができません。ただし,当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一であり,先の意匠登録出願に係る意匠公報の発行の日前に当該意匠登録出願があったときは,この限りではありません。

3-5.不登録事由に該当しないこと(意匠法第5条)

  •  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
  •  他人の業務に係る物品,建築物又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠
  •  物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠等

3-6.一意匠一出願であること(意匠法第7条)と例外

意匠登録出願は,経済産業省令で定める物品の区分により,意匠ごとにしなければなりません。ただし,同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定める要件に該当するものを構成する意匠については,組物の意匠として一括して出願することができます(意匠法第8条)。また,店舗,事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(内装)を構成する物品等に係る意匠については,内装の意匠として一意匠として出願することができます(意匠法第8条の2)。

3-7.先願主義と関連意匠制度(意匠法第9条第1項,第10条第1項)

同一又は類似の意匠について二以上の意匠登録出願があったときは,最も先に出願した者のみが意匠登録を受けることができます(意匠法第9条第1項)。同日に二以上の出願があったときの取扱いは,意匠法第9条第2項以下に定められています。

この先願主義の例外として,関連意匠制度があります。意匠登録出願人は,自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(本意匠)に類似する意匠(関連意匠)について,当該関連意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって,本意匠の意匠登録出願の日から10年を経過する日前である場合に限り,意匠登録を受けることができます(意匠法第10条第1項)。この10年という出願可能期間は,2019年(令和元年)意匠法改正(2020年(令和2年)4月1日施行)により,改正前の「本意匠の意匠公報発行前まで(実務上おおむね8箇月程度)」から大幅に延長されたものです。関連意匠にのみ類似する意匠についても,一定の要件の下で関連意匠として意匠登録を受けることができます(意匠法第10条第4項)。

3-8.登録要件の整理

要件根拠条文内容の概要
工業上利用可能性第3条第1項柱書意匠該当性等を満たし,工業上利用できるデザインであること
新規性第3条第1項各号出願前に公然知られた意匠又はこれに類似する意匠でないこと
創作非容易性第3条第2項当業者が容易に創作できるものでないこと
先願の意匠の一部との関係第3条の2先の出願意匠の一部と同一又は類似でないこと(同一出願人には例外あり)
不登録事由第5条公序良俗違反,混同のおそれ,機能上不可欠な形状等に該当しないこと
一意匠一出願第7条,第8条,第8条の2意匠ごとの出願。組物・内装の意匠は例外あり
先願主義・関連意匠第9条,第10条最先の出願者のみ登録可。関連意匠は本意匠出願日から10年以内に出願

4.意匠登録にかかる費用

📌 この章の結論

意匠登録には,特許庁に納付する出願料及び登録料がかかります。特許庁が公表する料金表(2026年4月6日更新)によれば,出願料は16,000円,登録料は登録から第1年目~第3年目まで毎年8,500円,第4年目~第25年目まで毎年16,900円です。

項目金額備考
意匠登録出願料16,000円複数意匠一括出願の場合は一意匠につき16,000円
登録料(第1年~第3年)毎年8,500円登録査定後,最初の納付として必要
登録料(第4年~第25年)毎年16,900円意匠権の存続期間は出願日から25年
秘密意匠の請求料5,100円意匠を一定期間非公開とする制度を利用する場合

上記は,2026年9月時点で特許庁ウェブサイト「産業財産権関係料金一覧」(2026年4月6日更新)に掲載されている金額です。料金は法改正により改定される場合があるため,実際の手続にあたっては特許庁の最新の公表資料を確認してください。また,上記は特許庁に納付する官公庁費用であり,弁理士等の専門家に出願手続を依頼する場合は,別途その報酬が発生します。報酬額は事務所により異なるため,個別に見積もりを確認してください。

5.意匠権侵害とは-実施の範囲と類否判断

📌 この章の結論

意匠権者は,業として登録意匠及びこれに類似する意匠を実施する権利を専有します。第三者が権原なくこれらを実施した場合,意匠権侵害となり得ます。類否の判断は,意匠を全体として観察し,取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分(要部)の構成態様が共通するかを検討する枠組みで行われます。

意匠権が設定登録されると,意匠権者は,業として登録意匠及びこれに類似する意匠を実施する権利を専有します(意匠法第23条)。ここでいう「実施」には,物品に係る意匠については製造,使用,譲渡,貸渡し,輸出,輸入又は譲渡等の申出をする行為が,建築物に係る意匠については建築,使用,譲渡,貸渡し等をする行為が,画像に係る意匠についてはその作成,使用,電気通信回線を通じた提供等をする行為が,それぞれ含まれます(意匠法第2条第2項)。第三者が権原なくこれらの行為を行った場合,具体的要件の下で意匠権侵害となり得ます。

意匠の類否は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて判断されます(意匠法第24条第2項)。この判断基準について,東京高等裁判所1998年(平成10年)6月18日判決(自走式クレーン事件)は,意匠を全体として観察することを前提としつつ,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠とが要部において構成態様を共通にしているかを観察するという判断枠組みを示しました。この枠組みは,その後の裁判例においても踏襲されています。

東京高等裁判所1998年(平成10年)6月18日判決(自走式クレーン事件)

【事案】自走式クレーンの意匠権者(原告・被控訴人)が,被告による自走式クレーンの製造・販売が自己の意匠権を侵害するとして,差止め及び損害賠償を求めた事案です。第一審(東京地方裁判所1997年(平成9年)1月24日判決)が原告の請求を一部認容したため,被告が控訴しました。

【争点】登録意匠と被告が実施する意匠(イ号意匠)との類否判断の基準,具体的には意匠の要部をどのように把握すべきかが争われました。

【判断】東京高等裁判所は,意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらに公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠とが要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要であると判示し,控訴を棄却して,差止め及び約4億5,117万円の損害賠償を認めました。

【射程】本判決が示した類否判断の枠組み(要部観察による構成態様の共通性の検討)は,その後の裁判例においても踏襲されています。もっとも,具体的にどのような構成が要部として把握されるかは,物品の性質・用途・使用態様や公知意匠の内容等の個別事情によって異なり,事案ごとの判断となります。

なお,意匠権侵害の成否は個々の事案の具体的な形状の対比によるところが大きく,専門家でなければ判断が難しい分野です。自社製品が他社の登録意匠に類似していないか,又は自社の登録意匠が他社製品に侵害されていないかを検討する場合は,弁理士・弁護士による個別の類否判断を受けることをお勧めします。

6.意匠権侵害によるリスク

📌 この章の結論

他社の意匠権を侵害した場合,侵害者は差止請求,損害賠償請求のほか,故意による侵害については刑事罰のリスクを負います。法人の業務に関する侵害には両罰規定が適用されます。

6-1.差止請求(意匠法第37条)

意匠権者又は専用実施権者は,自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができます。あわせて,侵害の行為を組成した物品の廃棄,侵害の行為に供した設備の除却その他侵害の予防に必要な行為を請求することができます(意匠法第37条第1項,第2項)。差止請求が認められた場合に,既に販売済みの商品について回収や購入者への返金対応まで当然に義務付けられるわけではなく,具体的にどのような措置が必要となるかは,請求の内容及び裁判所の判断によります。

6-2.損害賠償請求(民法第709条,意匠法第39条)

意匠権者は,故意又は過失により意匠権を侵害した者に対し,不法行為(民法第709条)に基づき損害賠償を請求できます。あわせて,意匠法第39条は,損害額の算定を容易にするための推定規定を置いています。同条第1項は,権利者の単位数量当たりの利益額に,侵害者が譲渡した物品等の数量のうち権利者の実施の能力に応じた数量を乗じた額等を損害額とすることができる旨を,第2項は侵害者が得た利益の額を権利者の損害額と推定する旨を,第3項は登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求できる旨を,それぞれ定めています。2019年(令和元年)改正により,権利者の実施の能力を超える数量等についても,一定の要件の下で実施料相当額を請求できることが明文化されました(同条第4項)。

【要確認】 損害額は,侵害者の譲渡数量,権利者の利益額,侵害者の利益額,実施料相当額,販売できない事情の有無等を踏まえて算定されるものであり,具体的な金額は事案ごとの立証と裁判所の判断によります。侵害者の過失は意匠法第40条により原則として推定されますが,秘密意匠(意匠法第14条)については同条ただし書により過失の推定が及ばない場合があります。

6-3.刑事罰(意匠法第69条,第74条)

意匠権又は専用実施権を侵害した者には,10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金が科され,又はこれらが併科されます(意匠法第69条)。侵害の罪の成立要件の具体的な解釈は個別の事案における検討が必要であり,実務上は行為者の主観的要素の立証が問題となることが少なくありません。また,法人の代表者,代理人,使用人その他の従業者が,その法人の業務に関して意匠権侵害を行ったときは,行為者本人が罰せられるほか,法人に対しても3億円以下の罰金刑が科され得ます(意匠法第74条第1項第1号,両罰規定)。

7.意匠権と不正競争防止法の関係

📌 この章の結論

意匠権に基づく請求には登録が前提となりますが,未登録の商品の形態についても,不正競争防止法上の形態模倣商品の提供行為の規制が問題となり得ます。両制度は保護対象,成立要件,保護期間が異なります。

項目意匠権不正競争防止法(形態模倣)
発生要件特許庁への出願・登録が必要登録不要。他人の商品の形態を模倣すれば足りる
保護期間意匠登録出願の日から25年最初に販売された日から原則3年間
保護対象登録意匠及びこれに類似する意匠他人が最初に販売した商品の形態を模倣した商品

自社の意匠登録出願が完了する前に商品を市場に投入する必要がある場合など,意匠権による保護が及ばない期間が生じ得ます。このような場面では,不正競争防止法による保護の可否もあわせて検討することが有用です。もっとも,同法上の保護の成否は「他人の商品の形態を模倣した」といえるか等の要件充足性によるため,個別の事案ごとに検討する必要があります。

8.当事務所で提供できるサービス

  •  意匠登録の出願に必要な手続のご支援
  •  貴社の商品又はサービスが他社の意匠権を侵害していないかのリーガルチェック
  •  貴社の意匠権が侵害されていると考えられる場合の差止め・損害賠償請求などのトラブル対応

日本橋法律特許事務所では,意匠権をめぐる案件の経験を活かし,意匠登録の出願支援から,侵害トラブルへの対応まで,依頼者様の状況に応じたご提案を行っております。

9.実務チェックリスト

  •  自社の新製品・新サービスのデザインについて,意匠登録の要否を検討しているか
  •  展示会・プレスリリース等での公開前に,意匠登録出願のスケジュールを確認しているか
  •  既に公開してしまった意匠がある場合,新規性喪失の例外(意匠法第4条)の適用可否を確認したか
  •  一つのデザインコンセプトから派生するバリエーションについて,関連意匠制度の活用を検討したか
  •  自社製品のリリース前に,他社の登録意匠との抵触の有無を確認しているか
  •  意匠権の存続期間(出願日から25年)及び登録料の納付スケジュールを管理する体制があるか
  •  秘密意匠制度の利用要否を検討したか
  •  侵害の疑いがある他社製品を発見した場合の社内対応フロー(証拠保全・専門家への相談)を整備しているか
  •  意匠権侵害の指摘を受けた場合に,事実確認・法的評価を行う体制があるか
  •  画像(GUI)意匠やパッケージデザイン等,保護対象の範囲について最新の制度を把握しているか

10.よくある質問(FAQ)

Q.意匠権とはどのような権利ですか。
A.物品,建築物又は画像の形状等であって視覚を通じて美感を起こさせるものを保護する権利です(意匠法第2条第1項)。特許庁への出願・審査を経て登録されることで発生します。
Q.意匠登録をしていないデザインは一切保護されませんか。
A.意匠権に基づく差止めや損害賠償の請求には,原則として意匠登録が必要です。もっとも,未登録の商品の形態についても,事案によっては不正競争防止法上の保護が問題となり得ます。
Q.意匠登録の要件は何ですか。
A.工業上利用可能性,新規性,創作非容易性,先願の意匠との関係,不登録事由に該当しないこと等の要件を満たす必要があります(意匠法第3条,第3条の2,第5条等)。
Q.関連意匠制度とは何ですか。
A.自己の本意匠に類似する意匠を,本意匠の意匠登録出願の日から10年を経過する日前まで出願し,登録を受けることができる制度です(意匠法第10条第1項)。
Q.意匠登録にかかる費用はいくらですか。
A.特許庁への出願料は16,000円,登録料は第1年目~第3年目まで毎年8,500円,第4年目~第25年目まで毎年16,900円です(2026年4月6日更新の特許庁公表資料に基づく2026年9月時点の情報)。
Q.他社製品が自社の登録意匠に類似しているかはどう判断されますか。
A.意匠を全体として観察し,物品の性質・用途・使用態様や公知意匠にない新規な創作部分等を参酌して要部を把握し,要部における構成態様の共通性を検討する枠組みで判断されます(東京高等裁判所1998年(平成10年)6月18日判決(自走式クレーン事件)等)。
Q.意匠権を侵害した場合,どのような請求を受けますか。
A.差止請求(意匠法第37条)及び損害賠償請求(民法第709条,意匠法第39条)を受ける可能性があります。差止めが認められても,商品の回収・返金対応が当然に義務付けられるわけではなく,具体的措置は請求内容や裁判所の判断によります。
Q.意匠権侵害で刑事罰を受けることはありますか。
A.意匠権又は専用実施権を侵害した者には,10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金又はその併科が科され得ます(意匠法第69条)。法人の業務に関する侵害には,両罰規定により法人に対して3億円以下の罰金が科され得ます(意匠法第74条)。
Q.意匠登録前にデザインを公開してしまった場合はどうなりますか。
A.原則として新規性を失い登録を受けられなくなりますが,一定の要件の下で新規性喪失の例外(意匠法第4条)の適用を受けられる場合があります。適用要件は個別の事情によるため,早期に専門家へご相談ください。
Q.画像(GUI)やアプリのアイコンも意匠登録できますか。
A.機器の操作の用に供される画像又は機器の機能発揮の結果として表示される画像は,一定の要件の下で意匠法上の保護対象に含まれます(意匠法第2条第1項)。具体的な該当性は個別の審査基準に基づく検討が必要です。

11.弁護士へ相談すべきタイミング

📌 この章の結論

デザインの企画段階から,公開・販売の前,そして侵害の疑いが生じた段階まで,それぞれの局面で弁護士・弁理士への相談が有用な場面があります。

  •  新製品・新サービスのデザインを固める企画段階で,意匠登録の要否とスケジュールを検討する場面
  •  展示会出展やプレスリリース等,デザインを公開する予定がある場面(公開前の出願又は新規性喪失の例外の手続要否の確認)
  •  自社製品のリリース前に,他社の登録意匠との抵触の有無を確認したい場面
  •  他社から意匠権侵害を指摘する警告書を受け取った場面
  •  自社の登録意匠が他社に模倣されていると考えられる場面(証拠保全,警告,差止め・損害賠償請求の要否の検討)

意匠権をめぐる紛争は,デザインの類否という専門的な判断を伴うため,初動の対応を誤ると自社に不利な結果を招きやすい分野です。早期に弁護士・弁理士へ相談することで,権利化及び紛争対応の両面でリスクを低減することができます。

12.まとめ

意匠権は,物品,建築物又は画像のデザインを保護する知的財産権であり,特許庁への出願・登録によって発生します。登録には,工業上利用可能性,新規性,創作非容易性等の複数の要件を満たす必要があり,関連意匠制度をはじめとする周辺制度の理解も重要です。意匠権侵害が成立した場合,侵害者は差止め,損害賠償に加え,刑事罰のリスクを負うため,自社のデザインを守る観点からも,他社の権利を侵害しない観点からも,早い段階での制度理解と専門家への相談が有効です。

当事務所では,意匠権をはじめとする知的財産権をめぐる案件の経験を活かし,意匠登録の出願支援から,侵害トラブルへの対応まで,依頼者様の状況に応じたご提案を行っております。意匠権をめぐる対応に関するご相談は,お気軽にお問い合わせください。

免責事項

 本記事は,掲載時点の法令,指針,裁判例等に基づき,一般的な法的情報を提供することを目的として作成しています。個別の事案では,事実関係や証拠等によって結論が異なるため,本記事は法的助言を目的とするものではありません。また,法令の改正,裁判例の変更等により,掲載内容が変更される場合があります。具体的な事案については,当事務所の弁護士へお気軽にご相談ください。

執筆・監修

日本橋法律特許事務所 代表弁護士 中山泰章(第二東京弁護士会所属)

意匠権に関するお困りごとは当事務所までご相談ください

経営者の方,法務・知財ご担当の方からのご相談を随時受け付けております。

デザインの権利化から,侵害トラブルへの対応まで,お気軽にお問合わせください。

お問合わせはこちらへ