〜医療紛争,患者対応,広告規制,行政対応の入口〜
医療機関の法務は,一般企業の法務に加えて,医療法や医師法などの医療特有の法令と,患者との関係を踏まえて考える必要があります。病院やクリニックで相談の多い論点を,5つに整理します。
1 医療ミス・医療紛争への対応
診療の結果をめぐって患者側から損害賠償を求められた場合,債務不履行(民法第415条)や不法行為(民法第709条)が問題となります。初動で重要なのは,診療録(カルテ)等の記録を確保し,事実関係を整理することです。患者や家族への説明の内容や時期によって,その後の交渉が難しくなるおそれがあります。
2 患者対応とカルテ開示
患者からの強い要求やクレームは,現場の職員が1人で抱え込まない体制が必要です。対応の判断基準と報告先を,あらかじめ決めておくことが実務上重要です。ただし,医師には正当な理由がなければ診療を拒めない義務があり(医師法第19条第1項),診療の拒否には慎重な判断が求められます。カルテの開示請求には,個人情報保護法に基づく対応が必要です。医療現場のカスハラ対応は,「業種別カスハラ対応マニュアル|小売・医療・コールセンター等の実務ポイント」をご覧ください。
3 医療広告の規制
医療広告には,虚偽の広告の禁止と,広告できる事項の限定があります(医療法第6条の5)。自院のウェブサイトも,規制の対象となり得ます。診療内容や効果を伝える表現は,ガイドラインに照らして,公開前に確認することが大切です。
4 行政指導・監査と医療法人の運営
行政の立入検査や指導を受けた場合は,指摘された事項と根拠を確認した上で,対応の方針を整理します。医療法人の運営では,理事会など機関の運営ルールを整えておくことも欠かせません。
5 そのほかの主な論点
インターネット上の口コミ・誹謗中傷,医療データの漏えい,職員の労務問題,自由診療の未収金の回収も,よく相談される論点です。オンライン診療を導入する場合の法務は,「オンライン診療の法務」をご覧ください。
個別の事案は,事実関係によって結論が異なります。必要に応じて,弁護士へご相談ください。