特許紛争

1 特許紛争の種類

企業の競争力を維持し,高めていくためには,自社の発明を特許として登録するなど技術の保護は欠かせませんし,一方で,無用の紛争に巻き込まれて時間やエネルギーを浪費してしまうことのないように,他者の特許権の侵害には十分な注意を払わなければなりません。しかし,特許をめぐっては,多くの紛争が生じているというのが現実です。

特許紛争の種類は,大きく分けて,特許権侵害行為の有無を争うもの特許権の有効性を争うものの2種類に分けられます。

これらのうち,前者の手続きで代表的なものは,特許権侵害品の製造,販売などの差止めや廃棄,損害賠償などを求める民事訴訟(特許権侵害訴訟)であり,後者の手続きで代表的なものは,特許無効審判や特許異議申立てです。ここでは,これらのうち,特に利用される「特許権侵害訴訟」と「特許無効審判」についてご紹介します。

① 特許権侵害訴訟(特許訴訟)

特許紛争の中でもよく行われる手続きで,主に,東京又は大阪の地方裁判所で行われます。原告(特許権者)が被告(特許権侵害者と疑われる者)に対して,特許権侵害品の製造,販売などの差止めや廃棄,損害賠償請求などを求め,民事訴訟を起こします。

② 特許無効審判(特許法第123条)

特許を無効にするための行政手続きで,特許庁で行われます。特許無効審判は,①の特許侵害訴訟における無効主張とは別に主張することもできます。

 

2 特許権侵害での法的手続き

自社の特許権が侵害された場合,特許権侵害訴訟及び特許無効審判の一方又は両方を起こすことが一般的です。これらの手続きは,それぞれどのように進めていけばよいのでしょうか。

⑴ 特許権侵害訴訟

ア 訴えの提起

まずは,原告(特許権者)が東京又は大阪の地方裁判所に民事訴訟を提起します。原告は訴状や特許権侵害の証拠などを裁判所に提出しなければなりませんが,これは他の訴訟と同じです。

イ 訴状審査・補正

提出された訴状を裁判所がチェックします。このチェックを通らないとそもそも訴えが認められません。審査の過程で訴状の内容を変更する必要がある場合もあります。

ウ 訴状送達

裁判所による審査の後,被告(特許権侵害者と疑われる者)に訴状や証拠が送達されます。

エ 被告による答弁書などの提出

答弁書とは,被告が自身の意見を主張するための書類です。被告は,裁判所に宛てて答弁書や証拠を提出します。

オ 争点整理

原告及び被告が,裁判所にそれぞれ主張書面や証拠を提出し,裁判で権利関係や損害額について主張立証を尽くします。

カ 和解

和解とは,紛争解決に向け,当事者が互いに譲歩して合意することです。和解によって紛争が解決される事件も数多くあります。

キ 判決

裁判所から判決が言い渡され,裁判が終結します。判決に不服のある当事者は,知的財産高等裁判所に控訴することができます。

⑵ 特許無効審判

ア 特許無効審判請求 

まずは,請求人が特許無効審判請求を行います。特許権侵害訴訟とは異なり,この請求は特許庁に宛てて行います。

イ 方式審査,審理

請求書の提出先である特許庁が,審理などを行い,請求内容を確認します。

ウ 特許権者へ審判請求書の送達

特許庁による審理の後,被請求人(特許権者)に審判請求書が送達されます。被請求人は,ここで初めて自身の特許権について無効請求が出されていることを知ることになります。

エ 特許権者による答弁書などの提出

答弁書とは,被請求人が自身の意見を主張するための書類です。被請求人は,特許庁に宛てて答弁書や証拠を提出します。

オ 本審理

書面又は口頭にて,当事者双方の意見が主張され,審判官による審理が行われます。なお,特許無効審判の口頭審理では,2021年10月からウェブ会議システムによるオンラインでの出頭も可能になっています。

カ 審決

双方の主張や提出された証拠をもとに,審判官が審理を行い,審決が下されます。審決には,特許を無効にする審決(認容審決)と特許を維持する審決(棄却審決)とがあります。審決に不服のある当事者は,知的財産高等裁判所に訴えを起こして争うことができます。

 

3 弁護士に依頼するとできること

上記のように,特許紛争の手続きのほとんどは裁判所又は特許庁に提出する書面の作成や書面の裏付けとなる証拠の収集や選別です。

こうした特許紛争を解決する上で,弁護士は以下のことをサポートすることができます。

① 書面の作成

裁判所や特許庁に提出する書類は,一般的に複雑なものが多く,求められている記載事項がよくわからないという方も多いのではないでしょうか。弁護士であれば,必要な書類を的確に作成し,紛争の解決のお手伝いをすることができます。

② 裁判所,特許庁などとのやり取りの代理人

裁判所や特許庁とのやり取りも,会社の方たちで行う必要はなく,代理人である弁護士に任せることができます。

③ 和解交渉

和解を行う場合,譲歩してもいい線と譲歩してはいけない線とがありますが,それは金額の問題だけにとどまりません。そのような和解交渉のラインを見極め,依頼者の方にとってよりよい結果となるよう,和解交渉を進めることも,弁護士の腕の見せ所です。こうした和解交渉では,多くの場合,特許関連の紛争の解決の経験が豊富な弁護士に依頼することがよりよい結果につながります。

このように,経験の豊富な弁護士に特許紛争の解決を依頼すると,多くの場合,スムーズに紛争を解決し,自社にとってよりよい結果を得ることができます。

 

4 特許紛争でお困りの方は当事務所までご連絡ください

これまで述べてきましたように,特許紛争は,知的財産権に関わる法的な紛争であるため,侵害者側であれ,被侵害者側であれ,紛争を自社に有利に解決するためには,弁護士,特に知的財産権をめぐる問題や紛争の解決に精通した弁護士へ依頼することが欠かせません。また,特許紛争は,案件ごとに対応が異なります。

当事務所では,特許をはじめとする知的財産(知財)に関するさまざまなご相談をお受けしており,それぞれの案件の内容に合わせた最適なご提案を行っています。

特許に関するお困りごとは,ぜひ当事務所にお気軽にご相談ください。